[スマートテクノロジーフォーラム]
STF<2019>/「みんなの認知症情報学による自立共生支援AIの研究」

静岡大学創造科学技術大学院 特任教授、みんなの認知症情報学会 理事長 竹林洋一

認知症の人を支えるために様々な研究や先駆的取り組みがなされてきました。その一方で、認知症のある人と家族、生活環境は多様かつ複雑で、医療介護現場は閉鎖的になりがちです。発展途上の認知症ケアを高度化するためには、大規模なエビデンス(科学的根拠となるデータ)と経験知・科学知を集積し、洗練させながら横展開する必要があります。

これまでの研究から、人工知能(AI)と情報技術(IT)は、多様な人の心的状態の記述、認知症の見立て知やケア知の深化成長、多元的エビデンスの構築等に役立つことが分かってきました。人間中心の様々なAIとITの研究開発と利活用を推進し、「みんな」が世代や職種を超えて「ごちゃまぜ」で研究に参画することで、認知症に関する「多面的な知」を創りだせると考え、2017年11月に「みんなの認知症情報学会」を設立しました。(https://cihcd.jp/)

認知症ケアの本質は、本人・家族が頼れる先を増やす「自立(self reliance)」と、あらゆる人々が目標を共有して協力し合う「共生(mutualcooperation)」だと考えています。このため、認知症の当事者(本人・家族)を中心とした介護領域のステークホルダーとAI技術が高度に協調し、本人の自立を支援するヒューマン・インタラクション技術の研究開発を旗揚げしました。ケアに関わるマルチモーダルな記憶・統合・認知・行動の表現モデルの構築と対話処理技術の開発、さらには、認知症のある人の状態像や他者との関係性を理解・表現する自立共生支援AIの研究を始動しました。2018年11月には、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)にも採択されました。(http://jiritsu-yosei.cihcd.jp/)今後、社会保障費の低減や当事者のQOL(Quality of Life (生活の質))を改善するエビデンスと経験知・科学知を広く・深く収集し、オープン化・横展開することで、社会システム全体において様々な“当事者”が参画する“インクルーシブ・イノベーション”の実現を目指します。目黒会の皆さんの参画とお力添えをお願いする次第です。