chofunetwork26-2
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21う魅力がある。会員の皆さんとも、是非、SL旅行で、この感動を分かち合いたい。現在、日本国内でSLが運行されている路線と、SL機種名を表1にまとめる。「なんだ坂!こんな坂!」母との大井川鐵道SL旅行私のSL旅行は、SLに乗る旅ではなく、SLの撮影を行う旅である。思い出深いSL旅行は、昨年7回忌を終えた母親との旅であった。母親は、父親が他界してから、家に1人で生活しており、私は、母親の寂しさを慰めるために年に数回、旅行に連れて行くことを決意して、2人の旅は母親が他界するまで約15年間続いた。10数年前のある日の日帰り旅行では、最終旅行先のみを伝えて、大井川鐵道を通るなど詳細ルートを教えていなかった。母親は、通過する大井川鐵道に、SLが走ることなど全く予想していなかったようだ。ある道の駅の駐車場に車を置き、母親に車の鍵を渡し道の駅で買い物をしたり、車の中で休憩しているように伝え、私は、駐車場脇から伸びている線路伝いに無人駅まで移動して、撮影準備をした。遠くから、ピーという汽笛が聞こえ、SLが発するさまざまな音がだんだんと大きくなる。SLが迫ってくるとカメラのフレームを考えながらシャッターを切る。無我夢中で連写する訳である。下図の写真がその一枚である。撮影に満足して車に戻ってくると、母親が、「脇をSLが走ってきた」「皆、カメラで写真を撮影していた」と興奮して話していた。母親が、SLを直に見たのは、40年ほど前のようだった。その興奮は、次の目的地へ移動する車の中でも続いていた。母親は、「シュシュポッポ、シュシュポッポ」とSLが煙を吐きながらゆっくりと坂を登る音が、「なんだ坂!こんな坂!」と聞こえるようだ。カラオケ好きな母親は、車の中で 「なんだ坂!こんな坂! なんだ坂!こんな坂! 」と盛んに歌っていた。 運転しながら、何か遠い幼い記憶の中に聞き覚えがある節だった。母親に聞いてみたら、小さい私をおんぶして一緒に東海道線のSLを見に行った時、この節を歌っていたそうだ。今年、女房と車で旅行の帰り道、群馬県の国道を走っていた時だった。脇の高崎線を(姿が見えなかったが)SLが煙を吐きながら走っている音だけが聞こえてきた。この時も他界して7年経つ母親が、私の子守唄 「なんだ坂!こんな坂!なんだ坂!こんな坂!」と大きな声で繰り返し歌っているようであった。このフレーズと、母との大井川鐵道SLの旅は、一生忘れられない大切な思い出だ。C61大井川鐵道SL旅の感動体験記特 集

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