[スマートテクノロジーフォーラム]
STF<2017>/「人工知能が浸透する社会を考える」

東京大学 特任講師 江間有沙

1.「人工知能が社会を変える」  フレーズの持つ意味と考え方

「人工知能が社会問題を解決する」あるいは「人工知能が社会問題を作り出す」など技術決定論的なフレーズが出回っている。確かに人工知能のような新しい「モノ」や「ネットワーク」が入ってきたときにこそ、今までの仕事の在り方、制度、人間関係などを見直し新たなルールを作る必要がでてくる。しかし、問題は技術ではなくて産業構造や社会制度、人間関係に根差すものかもしれず、技術と社会の相互作用に着目して問題の本質を見極める必要がある。

2.人工知能技術に関するルール作り

ルールや原則を作るためにはその基盤となる考え方や目的が必要になる。現在の人工知能技術に関しては、それが「倫理」という言葉で議論されることが多い。人工知能技術に関する倫理には、大まかに(1)研究(者)倫理、2)研究開発の原則や社会的影響に関する「人工知能の倫理(AI Ethics)」、そして(3)倫理、権利や自律等の概念を技術的に構築することで考える「倫理的な人工知能(Ethical AI)」に分類される。現在、それぞれの項目について学術団体、省庁、国際機関等が論点を整理し、提言を行っている。

3.社会における人工知能技術

一方、焦点を技術から私たちの生活にシフトすると、実はすでに「人工知能技術」は私たちの生活に浸透している。例えば現在、「人工知能に雇用が奪われる」と危惧されるが、多くの場合、なくなるのは「仕事」ではない。仕事を細分化したタスク(作業)のうちいくつかが機械に置き換わる現象が進んでいく。そこでどのようなタスクを置き換えたいかは、その仕事が提供する「価値」や「目的」に依存する。

例えば、自分が朝起きてから寝るまでに行っている「タスク」を書き出し、図1のグループに分類すると、意外にも多くのタスクが「奪われてほしい」ものであることに気づかされる。一方、機械に任せたくないタスクを見ると、「機械に任せることが可能でも人が行うべき」と考えるタスクがあることにも気づく。また、一概に分類できないタスクは、内容が大きすぎるか解釈が多義的であることが多い。例えば、ワークショップの一例であるが「料理」を「食事を作る」と「食器を片付ける」に分けると、前者は「機械に任せたくない」、後者は「機械に任せたい」に振り分けられたグループがあった。

このように「タスクを創造的に分割する」能力がこれからの時代は必要となってくる。

171204STF発表者4(江間様)図R