[スマートテクノロジーフォーラム]
STF<2017>/「人工知能は不動産物件情報のウソを見破れるか?」〜1億点の物件画像データを活用したディープラーニング応用の取り組み〜

 (株)LIFULL  LIFULL研究所 主席研究員 清田陽司

1. 不動産物件情報における画像・映像情報の重要性

不動産情報サイトに掲載されているさまざまな情報の中でも、物件画像はとくに重要である。不動産情報サイトの利用者を対象としたアンケートでも、物件画像が非常に重視されている傾向がうかがえる。一方で、画像品質のばらつきは大きな課題となっている。なかには、「不動産の表示に関する公正競争規約」などに抵触する画像が掲載されるケースも見られる。不動産情報サイトを運営する各社では、人手によるチェックなどで情報品質の向上に努めているが、数百万点を超える写真データが毎日のように入稿される状況では、人手でのチェックには限界がある。

2. ディープラーニングによる不動産物件画像の不整合検出

ディープラーニングの有効性が広く知られるようになったきっかけは、2012年に開催された画像認識研究のコンペティションILSVRCにおいて、ニューラルネットワークを発展させた手法を採用したトロント大学のシステムSuperVision が、他のチームを圧倒的に上回る精度を達成したことである。ディープラーニングによる画像分類はすでに人間並みかそれ以上に高い精度を達成していることから、ビジネス現場での応用事例も多数報告されつつある。

日本最大級の不動産情報サイトLIFULL HOMEʼSでは、不動産会社から入稿される不動産物件写真のカテゴリ不整合をディープラーニングによって検出する仕組みを2016年12月より運用している。LIFULL HOMEʼSでは、ユーザにとってより有益な情報を提供するという観点から、室内写真がより多く登録されている物件を検索結果において優先的に表示する仕組みをとっているが、図の一番下の写真のように、なかには室内写真以外の画像が室内の種別で登録されるなどの不整合が起きていることが課題となっていた。そこで、ディープラーニングによって図に示すような整合率の自動算出を行い、登録種別と不整合となっている写真については、登録元の不動産会社に是正を促すようにしている。

3. 学術コミュニティへのデータセット提供を通じた不動産情報のオープンイノベーション

LIFULL では、保有する膨大な物件写真や間取り図などの画像データを含む巨大なデータセットを、学術用途向けに無償で提供することによって、不動産に関わる研究を活性化し、新たなイノベーション創出につなげようとする試みを行っている。国立情報学研究所(NII)の協力を得て2015年より提供を開始した「LIFULL HOMEʼS データセット」は、2年を経て画像処理分野を中心に利用が広がりつつあり、とくに間取り図画像を用いた研究が画像処理分野のトップレベル国際会議でも採択されるなどの成果が生まれている。今後、不動産業界でも画像処理分野を中心に人工知能技術の適用が広まることが期待される。

171204STF発表者2(清田様)図R