[スマートテクノロジーフォーラム]
STF<2017>/「人に寄り添う人工知能の実現に向けて」

電気通信大学大学院情報理工学研究科 教授 人工知能先端研究センター長 栗原 聡

IT、ビッグデータ、IoTなど、様々なキーワードが世を賑わせてきたが、将来、歴史を振り返ると、2010年後半からは間違いなく人工知能が主役であったと書かれることになりそうだ。そして、この人工知能ブームも実は3度目であり、過去2回のブームは、残念ながらいずれもブームが終わり、いわゆる「人工知能冬の時代」と揶揄される状況に至っている。失敗に至った原因を概して言えば、人が持つ知能を工学的なシステムとして構築しようとすればするほど、人の脳の複雑さを知り、構築することの難しさに直面してしまったということと、もうひとつは仮にそれなりの理論ができたとしても、それを実現させるための高性能コンピュータを始めとする様々な環境が当時は整っていなかったということの2つが主な要因である。

では、3度目のブームも過去と同様に終焉を迎えるのであろうか?

今回は過去とは異なる展開となっており、研究ではなく開発において盛り上がっていることが大きな違いである。今回のブームの主役はディープラーニング(深層学習)である。しかし、ディープラーニングの基本的な技術が確立されたのは10年程度以前なのである。では、なぜ10年前にディープラーニングという技術が確立した時には研究者においてブームにならなかったのか?

ディープラーニングという手法は燃費が悪い。その高い性能を発揮させるために、多くの学習用のデータを必要とするのである。そして、多くのデータを必要とするということは、それだけ高速なコンピュータが必要になるということである。10年前は、まだビッグデータを容易に利用できる状況には至ってはいなかったし、何よりコンピュータの性能も低かった。つまり、第3回目の人工知能ブームは研究ではなく、潜在的に高い性能を持つディープラーニングのその性能を実際に発揮できる状況が整い、実際に活用できる段階に至ったことでの盛り上がりなのである。実際に使えることでの盛り上がりであることから過去3回のブームとは盛り上がりの構造が異なるのである。

では、これからの人工知能はどのように進化していくのであろうか?そして人工知能はどのように社会に浸透し、人と人工知能はどのような関係を構築することになるのであろうか?

鍵となるのが自律性と汎用性であり、そして人と人工知能とが共生する関係こそが理想的な未来像であると考えている。そして、同時に極めて高い能力を持つ人工知能は使い方によっては大きな悪影響を及ぼすことも懸念されており、単に研究して創るだけでなく、創る際のガイドラインの策定も研究者にとっての極めて重要な課題である。

171204STF発表者1(栗原様)図R