調布ネットワーク 25-2
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28調布ネットワークVol.25-2な車両や歩行者位置の測定精度の向上である。現在用いられている位置測定手段の多くはGPSを基本としており、その精度は誤差10メートル程度と言われているが、都市内など建物に反射した経路の電波が届く場合、伝搬遅延時間のため誤差は数10メートル前後まで悪化する。車載端末の場合、走行範囲は道路上のみに限定されるので、補助的手段としてマップマッチング、ジャイロ、加速度センサー等を併用することで、この誤差の影響を少なくすることができる。しかしながら、歩行者が携帯する端末で同程度の精度を得ることは現時点では困難であり、しかも歩行者の位置は歩道上と車道上を識別できる精度が必要になるので、根本的により精度の高い方法、例えば路上に埋め込まれたパッシブタグにより位置を知る方法等との併用が必要になるであろう。4 今後の展望日本は世界の中で最も高齢化が進んでおり、このような社会において安全を確保する技術開発と政策が重要になっている。通信技術を用いた安全運転支援システムは交通事故を未然に防止できる技術として期待されているが、以下の2つの課題をさらに解決していく必要があると考えられる。(1) 車載端末普及のための施策車車間通信機能を車に搭載してもらうためには、利用者がそのメリットを感じられ、かつ負担が少ない必要がある。車車間通信の開始当初は通信端末の搭載車両数が少なく、車車間通信のみでその効果を実感することは難しい。したがって、当初は路車間通信サービスが中心となってメリットを実感できるよう、路側機の早期設置展開が望まれる。またかってABSなどパッシブセーフティ機能の装備された車両の保険料金が割引されたように、安全装備車両に対する保険や税金負担が軽減されるような施策が必要であろう。(2) 測位精度の向上技術面で最も大きな課題は衝突の予測に必要信システムである。路車間通信は一般的に交差点等の信号機など車両を見通せる高い位置にアンテナが設置され、周辺の車両に交差点・信号・規制などの交通に関する情報を提供する。車車間通信と路車間通信は長さ100ミリ秒の時間フレームを時分割で共用しており、具体的には路側機から路車間通信期間を示すNAV(Network Allocation Vector)信号が送信され、各車両はこれで示された路車間通信期間以外の時間に車車間通信のパケットを送信することで、車車間通信と路車間通信が互いに影響しないようにしている(図2)。さらに最近の研究開発動向として、既存の車車間・路車間通信共用方式にさらに歩車間通信機能を追加するシステム形態の技術検討が2010年から開始されている。ここでは歩行者が携帯する端末がGPS(全地球位置測定システム)等により自らの位置を把握し、かつ車両からの車車間通信パケットを受信することで危険を察知して歩行者に警告すると共に、車両に対しても歩行者の位置を送信して事故を防止することを目指したものである。現在までに既存システムの拡張の技術検討やフィールドテストが行われており、今後は歩行者の位置特定の精度の向上などの課題の解決の検討が残されている。

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