調布ネットワーク 25-2
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17私と本の関係は、お見合いと同じで本屋の店頭での出会いがきっかけと思う。特に、私は司馬遼太郎が書く様な歴史小説が大好きで、戦国時代と幕末の下剋上有りの混沌とした時代の武士が活躍する小説を常に読んでいる。ところがある時、別なジャンルを良く読んでいる読書家(同じ会社での総務系業務の課長)と居酒屋で題名にある本の紹介を受けた。「佐々木譲」は、推理小説作家で有名だが全く読んだことがなかった。佐々木氏にとってもこの本は推理小説とは違った位置付けのジャンル「第二次世界大戦前の歴史小説」らしかった。翌日、本屋に駆け寄り、手に取った。著者の「はしがき」が良かった。「米国政府は、真珠湾攻撃を米国のスパイ網が事前に把握して、知っていたのではないか?」と言う説が流布されており、その時代背景を記述した小説であると書かれていた。それ以降は、手に汗握るスパイもの小説と言うか、推理・サスペンス小説の手法とも思えるくらい私を離さなかった。特に、ハリウッドの映画にも似た「煩雑に変わる場面と場面の描写。ゴルゴ13の様な主人公:ケニー・ケンイチロウ・サイトウ(日系の米国市民、日本名:斎藤賢一郎)、東京の教会牧師(スパイの支援者)、エトロフ島の駅逓(公的な施設)の女主人(白系ロシア人混血)。以上、3人を中心に物語は、展開していく。これからこの本を読まれる皆さんのために結末は触れないが、兎に角、歴史小説のひとつとして、また、エンターテイメントとしても楽しめる本である。「佐々木譲」氏のハリウッド撮影法に似た書き方は健在で、第二次世界大戦三部作の「ベルリン飛行指令」「ストックホルムの密使」や、「五稜郭残党伝」、「武楊伝」など等、楽しめる。最近では、警察小説に新天地をみつけられた様で、次から次へと量産されている。私の本棚もついつい「佐々木譲」氏の本を買って読んでしまう。2010年には、直木賞を受賞した。北海道出身、高卒でホンダ出身の元サラリーマン小説家である。警察小説も良いが、そろそろ、大型の歴史小説を書いて欲しいなと、一ファンは、思っているのだが。私が薦める一冊坂本 隆 1972年物理工学科卒エトロフ発緊急電 佐々木 譲 著発行所:株式会社新潮社読書の愉しみ特 集

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