調布ネットワーク 25-2
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16調布ネットワークVol.25-2福岡に赴任していた時、古伊万里展を開催していた市美術館で入手した本。横10・5㎝×縦15㎝の小型の本で、外出時にはポケットに入る大きさですが、255ページの中に古伊万里の情報がギッシリと詰まった貴重な一冊です。編者は陶磁器専門の美術館として佐賀県有田町にある「佐賀県立九州陶磁文化館」で、内容の充実感と信頼性はまさに完璧であり、執筆者の一人である大橋康二氏はこの陶磁文化館の元館長として活躍され、著書も多く古伊万里研究の第一人者です。古伊万里とは。なぜ肥前の国(江戸時代の佐賀藩)有田で焼かれた磁器が伊万里焼とよばれるのか、古伊万里とよばれる磁器はいつの時代に焼成されたものなのか、また磁器の原料から伊万里焼ができるまでの製法など、初歩的な事柄が簡潔に分かりやすく書かれています。理解しやすいのがこの本の特徴でもあります。もうひとつの特徴として、写真の数と写り具合(光の当て方)が挙げられます。九州陶磁文化館の館蔵品のなかから優品三百点が掲載されており、職人によって描かれた赤・緑・黄の色や文様(描かれている図柄)、スレ具合や焼きムラなどがはっきり鑑賞でき、またすべての写真ごとに焼成年代、大きさ(口径、高さ、底径の寸法)が書かれているため、イメージしやすくなっています。このような写真集でできるだけ沢山の本物を見ることが、“古伊万里の目利き”になる近道だと思います。大橋氏が担当執筆された「古伊万里の展開」の部分では、江戸初期草創期(太閤秀吉が朝鮮から連れてきた陶工たちが磁器生成を始めた)、寛永期(1624~1644)から始まり文化文政期(1804~1830)までを10の期間に分け、その時代に焼かれた古伊万里の特徴を詳細に記しており、これを理解しておけば文様、藍の濃さや塗り方などからいつ頃の古伊万里なのかなど時代分析が出来て、鑑賞の幅が広がります。残念ながら、発行所の青幻舎および九州陶磁文化館に在庫の問い合わせをしましたが、どちらにも無いとの返事でした。私が薦める一冊大竹 幸裕 1975年電波通信学科卒佐賀県立九州陶磁文化館コレクション古伊万里入門発行所:株式会社青幻舎佐賀県立九州陶磁文化館 編者

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