調布ネットワーク 25-2
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14調布ネットワークVol.25-2今回私が取り上げる本は、2013年の本屋大賞を取った百田尚樹の「海賊とよばれた男」です。ベストセラーになった本ですので既に読まれた方が多くいると思いますので内容の紹介は省略しますが、本書は出光興産の創業者出光佐三(本書での名前は国岡鐵造)の一代伝記物語です。戦後の復興のシンボルとなった東京オリンピックの2年前の昭和37年7月、当時東京の中学2年生だった私は「世界最大のタンカー 日章丸(3代目)(佐世保重工業・13万t)が進水」と言うニュースで「世界一のタンカーを日本は造ったんだ」と感激したことを今でも覚えています。しかし本書に書かれる日章丸はそれより遡ること9年、終戦の爪痕がまだ残る昭和28年の5月にイランのアバダンで石油・軽油2万2千キロリットルを積み込み、ホルムズ海峡を封鎖するイギリス海軍からの砲撃を避け、日本とペルシャ湾の70000海里(約13000㎞)をはるばる航行して日本に石油を運んできた2代目「日章丸」です。当時イランは自国の石油基地の国有化宣言を行いイギリスの石油会社と係争中でイギリス海軍によってホルムズ海峡は封鎖されていましたが、その包囲網をくぐり抜けて、日本の民間会社のタンカーが石油買い付けの為にアバダンまでのりつけ、満タンにした石油を日本へ持ち帰ると言う気宇壮大な計画を考え、実行したのが出光佐三でした。今でこそ普通の話ですが、当時アメリカのメジャーからの輸入しか方法がなかった日本がアメリカ以外の国から直接石油を買い付けたこの出来事は青天の霹靂の話だったと思います。出光佐三の95年間の生きざまの“国民を思う”、“社員を思う”、“家族を思う”強さと、それを阻害するものに対する強烈な“反抗心”と“行動力”の一つ一つに感動し、本書を読み終えるまで何度も涙腺が緩みました。失われた20年と言われ自信を無くし、内向き志向になった日本ですが、「世のため、人のためになる仕事をするのだ」と言う信念を持った出光佐三と言う経営者が昔いたことを知ることが、輝く日本を取り戻す自信のきっかけになればと思い、今の若い人たちに是非読んでもらいたい一冊と思いました。余談になりますが、作者のデビュー作である「永遠の0」ではゼロ戦特攻隊の話を通して、戦争の“無責任さ”と“悲しさ”を教えられました。本書では一人の人間の持つ“信念”と“行動力”の大きさを教えられました。作家百田尚樹にはこれからも注目して行きたいと思っています。私が感動した一冊岡田 一夫 1972年物理工学科卒海賊とよばれた男〔上〕〔下〕百田尚樹 著発行所:株式会社講談社

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