調布ネットワーク 25-2
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12調布ネットワークVol.25-2「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」、この有名な最も短い手紙は徳川家康の家臣、本多作左衛門重次が陣中から妻に宛てて送った手紙です。お仙とは仙千代を指し、のちの越前丸岡城主本多成重のことです。手紙文化の発信基地としての丸岡町が、心のこもった日本一短い手紙文のコンクール「一筆啓上賞」を行っています。何年も続いているコンクールで延べの応募者は10万人を超えていると思います。今年のテーマは「わすれない」です。審査員は池田理代子さん、小室等さん、佐々木幹郎さん、中山千夏さん、林正俊さんです。今までの入賞作品など掲載した本が何冊も発行されています。いくつかの作品を紹介しましょう。「友へ」という題で、「子供の写真の年賀状はもうやめよ、あんたのことが知りたいねん。」(41歳、主婦)、「アインシュタインは友といるときは時の流れが早くなるのを知ってたかな。」(18歳、会社員)。「ふるさと」という題で、「場所よりも人なんだね。じいちゃんのいないあの家、もうふるさとのにおいしないよ。」(21歳、女性)。「愛」という題で、「お届けしました愛はコワレものです。取り扱いには十分お気を付けください。」(33歳、女性)。「喜怒哀楽」という題で、「口元のわずかな動きで分かります。かあさん、今日はうれしいんだね。」(59歳、夫)、「家族全員がいたときの玄関いっぱいのあの喜怒哀楽の靴たちはどこですか。」(54歳、主婦)。「ありがとう」という題で、弟におくる。「まねするな、くっつくな、すぐよぶな、でもそばにいてくれてありがとう。心強いよ。」(8歳、少年)。赤ちゃんに送る。「仮設内に元気な赤ちゃんの声が聞こえるようになった。皆で耳を傾ける。ありがとう。」(69歳、男性)。「涙」という題で、自分に送る。「ソフトの試合に負けた。ぼくはかくれて泣いた。なんでかくれたんやろ。」(11歳、少年)。「お母さんへ」という題で、6年前にガンで亡くなった実母に送る。「イナイ、イナイ、バア!酸素マスクを外し、三歳の孫を笑わせたね、母の最期の笑顔だった。」(43歳、主婦)。「夢」という題で、「子供にばっかり夢を聞かないで。夢を語ってくれる大人はステキだよ。」(11歳、少女)、「いつも、あそんでるとちゅうでバイバイ。ごめんね。朝、ママがおこしにきちゃうんだ。」(8歳、少女)。数え上げればキリがないくらい素敵な短文が盛りだくさんです。世の中には本当に多くの方々が暮らしていますし、人それぞれ感動の仕方やモノを見る視点が異なることを知らされます。お薦めするシリーズです。私が薦める一冊岩波利光 1972年物理工学科卒日本一短い手紙 夢福井県坂井市(財)丸岡町文化振興事業団 編著発行所:中央経済社

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