調布ネットワーク 25-2
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11読書の愉しみ特 集英語は中学以来の長い付き合いであるが、一向に上達しない。50歳過ぎに英会話を諦めた。そんな無念な気分が鬱積しているなか、9年前、立ち寄った本屋にブラウン作の「ダ・ヴィンチ・コード」日本語版が、うず高く積まれていた。どうせなら原書で読もうと奮い立ち、この時が私の洋書ミステリーの始まりとなった。当時、ダビンチ・コードから1年の遅れで、ラーソン作の「ミレニアム・ドラゴンタトゥーの女」英語版が出版され、話題になっていた。これを読んで生涯出会った最高の本と感動し、洋書ミステリーに夢中になっていった。ところが、ラーソンは出版前に亡くなっており、残念なことに彼の次回作を読むことができない。そこで第2のミレニアムを求めて、色々な作家を読み漁った。そのとき発見したのが、デービッド・バルダッチ作の「ホウル・トゥルース」。この作品は、事件の種類は異なるが(猟奇殺人か偽装テロか)、ミレニアムの女性主人公をタフな男性に置き換え、主人公のロマンスを事件に絡める手法は共通している。それ以来、洋書はバルダッチ作品に絞り、入手できる約半分の10作品を読んだ。バルダッチは、ブラウンほど舞台装置が大掛かりではないが、筋立や登場人物はすばらしいと思う。次に、洋書ミステリーならではの楽しみを挙げる。第一は、アメリカ社会や生きた英語(米語)の一端を知ることができること。アメリカ社会は、能力主義、個人主義、監視社会などが想像以上に徹底しているように思える。ピューリッツァー賞を受賞しても重要ポストにつけない、身内から犯罪者が出ても警察署長をクビにならない、監視カメラの映像を大陸全体から集められる、等々、作品内の描写からそのことがうかがえる。米語については、助詞を補って、簡単な動詞で多様な言い回しがあることに気がついた。例えば、車の移動に、pullやpushをinやintoと合わせて使う。pullは車をその場所に引っ張り込む、pushはそこへ押し出す、といった意味合いか?第二の楽しみは個人的なことだが、ひとつは日本で流行る前に既に読んで知っている、といった独りよがりの優越感。もう一つは、実はこれが密かな楽しみで、以前暗記した単語が辞書を引かずに分かった時の満足感。英語は単語と文法を丸暗記すれば良い、といった誤った学習スタイルの悪癖が未だに顔を出す。しかし、今では、単語の暗記はボケ防止には良い、とも考えている。私が薦める一冊 相田 潔 1972年物理工学科卒ホウル・トゥルースデービッド・バルダッチ 著

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